concept

高次元分布研究を知能に繋げる、医学情報処理の真髄を極める

確率的情報処理研究室井上 真郷 教授

担当科目:Cプログラミング/入門
情報理論
確率的情報処理特論

  • 研究紹介research

    井上研では、高次元分布の扱いを中心に据え、人工知能、情報統計力学、画像・音声処理、医学情報処理などの情報処理諸課題に取り組んでいます。様々なデータの整合性をとった内部表現と、最適な次の一手を引き出す計算アルゴリズムが興味の対象です。研究手法としては数学と計算機科学がベースになります。データは医学・生物データの他、一般的な画像・音声・音楽・言語・パズルゲームなどを幅広く扱います。自分で好きなテーマを選べます。

  • メッセージmessage

    情報処理分野はAI技術により目まぐるしく発展していますが、本質的なものは大きくは変わっていません。様々なデータを確率分布としてモデリングすることで、曖昧さを経験則に留まらせず、数学・科学・工学として扱うことです。複雑な数式やアルゴリズムを理解するのは手間ですが、生涯通用する基礎力になると確信します。その上で、未知の事柄を探求する面白さを発見してください。好きなことを仕事にして活躍できるように支援します。

研究説明research activities

井上研で行っている研究は次の三種類に大別されます。
(1) 情報統計力学
学習、推論、最適化といった問題の多くは、ある関数が最小になるような変数の値を求めることに帰着します。簡単なようですが、変数の数が増えると大難問です。関数の形に大きく依存しますが、大雑把に言うと、変数が実数なら10個程度、バイナリなら100個程度が解ける限界です。この「次元の呪い」のため、強化学習のような一般的な学習方法も頓挫します。一方、変数の数を無限大に増やしていくと、部分的に問題が解けることがあります。例えば、誤り訂正符号の一つである低密度パリティ検査(LDPC)符号の送信信号各ビットの平均値が求まったりします。このような枠組みを提供してくれるのが統計力学で、現実の物質を扱うという縛りを取り去ったものが情報統計力学です。従来、Bayes公式の分母などで、2N回の足し算が出てくると、そこでお手上げになっていましたが、情報統計力学により、特に情報分野で更なる地平を拓くことが可能となりつつあります。

(2) 医学情報処理
医学分野では、電子化により近年大量のデータが発生するようになり、適切な解析手法が望まれています。典型的なデータは、項目数(血液検査での各種値やゲノム情報など多彩)はやたらと多い一方、サンプル数は100人などと非常に少ないものです。通常の解析手法では、全ての項目が少しずつ病気に関係している、などと曖昧な結果になり、解析に失敗します。近年、スパースモデリング、圧縮センシングと呼ばれる手法が発展し、不必要な項目を明快に判定できるようになり、注目されています。この技術は、CTで被曝を軽減する、MRIで撮影時間を短縮する、といった事にも応用でき、積極的に研究を進めています。生物と情報の両方を学んだ方はアドバンテージがあります。

(3) 画像・音声処理
画像については、複数の低解像度の写真から高解像度の綺麗な写真を推定する超解像と呼ばれる研究や、写真に写っているモノ(猫や林檎など)を当てる一般物体認識、不正コピーを見抜く電子透かし、などを研究しています。近年、深層学習(deep learning)と呼ばれる画像特徴抽出手法が成功しており、医療画像処理と組み合わせて研究を進めています。画像関連は計算高速化の為GPGPUも使います。音声については、平均律楽器(ピアノなど)で演奏された音楽を純正律楽器(バイオリンなど)で演奏されたかのように変換する研究(これにより和音が綺麗になる)、話者認識などを研究しています。ヒトの視聴覚はそれぞれ特化した処理をしているため、特殊な解析手法を用いることが多く、単純な理論では通用しない面白い分野です。

井上研の研究テーマ例。データの生成過程を確率モデルで表すことで、柔軟にデータから情報を引き出す数式を導きます。計算アルゴリズムは複雑なものになる事が多く、最後はプログラミングで解決します。

井上研の研究テーマ例。データの生成過程を確率モデルで表すことで、柔軟にデータから情報を引き出す数式を導きます。計算アルゴリズムは複雑なものになる事が多く、最後はプログラミングで解決します。

profile

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略歴ー

1997年
京都大学医学部附属病院耳鼻咽喉科 研修医
2003年
理化学研究所脳科学総合研究センター脳数理研究チーム等 ポスドク
2004年
東京工業大学大学院総合理工学研究科知能システム科学専攻 助手
2005年
早稲田大学理工学部電気・情報生命工学科 専任講師
2007年
早稲田大学理工学術院 准教授、2013年より教授(現職)

学歴ー

1997年
京都大学医学部 卒業 医師
2003年
京都大学大学院医学研究科外科系専攻 博士課程修了 博士(医学)