concept

生き物の第六感を
科学する

分子細胞生物学研究室岡野 俊行 教授

担当科目:生命科学A、免疫学、
フォトバイオロジー

  • 研究紹介research

    遺伝子組換え技術、タンパク質精製、タンパク質機能解析といった分子レベルの研究から、環境変動に対する動物行動の解析まで、広く研究しています。動物飼育、遺伝子解析、実験装置設計からタンパク質構造予測まで、手法も多岐にわたります。磁気受容体の研究では、光のエネルギーを利用した化学コンパスの仕組みを調べています。その他、季節変化や月周期に対応するための体内時計、生体応答の仕組みを利用した次世代照明の開発や、抗体を用いた新技術の研究も行っています。

  • メッセージmessage

    当研究室では、学生一人ひとりを研究者の卵として考え、各自がそれぞれの研究テーマについて理解し、考えながら研究をすすめることを目指しています。また、研究テーマの背景、目的、結果、将来性などについて、分野外の人にも理解してもらえるように説明できることを目標としています。そのための能力を高めるべく、実験だけでなく、ディスカッションやゼミには特に力を入れています。

研究説明research activities

光を情報源として利用するため、生物は多様な光受容体を発達させてきました。光を受け取る分子は、網膜だけでなく皮膚や松果体や脳などに広く存在しており、形や色の情報に加え、時刻や季節あるいは方位など多様な情報の感知を行い、生体機能の制御に関わっています。岡野研では、光を切り口に分子生物学、細胞 生物学、生化学、行動生理学における最先端の技術を応用しながら、動物の神経系での外部情報の受容と伝達の分子メカニズムを主テーマとして、分子・遺伝子・細胞・個体を用いた研究を行っています。具体的には、魚類や鳥類の眼や脳を対象をとして、方位・季節・時刻の情報受容に関わる遺伝子やタンパク質について調べ、さらに、酵母や大腸菌を利用して組み替えタンパク質を作製し、その性質を調べています。その他のテーマとして、マイコンを使った実験装置開発や、温度や光刺激で活性が変化する一本鎖抗体の開発なども行っています。これらのテーマに興味を持つ積極的な学生を待っています。

【具体的な研究テーマ例】

  • 脳や網膜に存在する新しい光受容分子の機能解析
    ニワトリに存在する新規の光受容候補分子の同定を行いました。この分子がどのように光を受容し、情報伝達するかを解析しています。
  • 方位感知、磁気受容の分子メカニズムの解明
    細菌から脊椎動物に至る多様な生物が、渡りや帰巣、逃避など様々な場面での進路決定に地磁気を利用しています。しかし、その磁気受容メカニズムの詳細は未だ解明されていません。一部の生物が光受容タンパク質を使って磁気受容することから、磁気受容メカニズムの解明を進めています。
  • 抗体の作製と利用
    光受容候補分子の機能推定のため抗体を作製しています。その中に、光や温度に依存して抗原との結合力が変化するものが見つかり、これらの性質は新たな研究ツールとして利用することが期待されます。
  • 月光応答・季節感知のメカニズム解明
    月光に応答できるトラフグ眼球由来の培養細胞や、トラフグ、ゼブラフィッシュなどの個体を研究対象とし、弱光や季節変化に応答して発現量が変動する遺伝子を解析し、月周同調や季節感知の仕組みを解明しようとしています。
  • ヒトの睡眠に関する研究
    就寝前の光環境を適切に制御することによって、自然に眠くなり、眼が覚めるような、生活環境の実現を目的として研究を行っています。脳波測定などを行います。

【研究手法】
研究室では、ヒヨコ、カエル、ドジョウ、ゼブラフィッシュ等の高等生物から、酵母、培養細胞、大腸菌といった様々な生物を用いて、遺伝子、タンパク質、組織、行動など多岐に渡る研究を行なっています。また、抗体を用いた解析やバイオインフォマティクスによるタンパク質の機能予測や分子系統解析、遺伝子組換え技術を用いた変異体タンパク質やトランスジェニック動物の作製など様々な技術を活用しています。また、研究室独自に各種実験装置の設計や作製を通じて日々、新しい実験系の開発に取り組んでいます。

【その他】
自分のテーマを持ち、自分で考え、工夫しながら研究を展開でき、さらに、自らの研究について説明できる人材の育成を目指しています。

profile

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略歴ー

1993-1995年
日本学術振興会 特別研究員(PD)
1995-1996年
東京大学 教養学部基礎科学科 第一助手
1996-2001年
東京大学 大学院 理学系研究科生物化学専攻 助手
2001-2005年
東京大学 大学院 理学系研究科生物化学専攻 講師
2002-2006年
科学技術振興機構 さきがけ「光と制御」領域研究者(兼任)
2005-2010年
早稲田大学 理工学部 助教授・准教授
2006-2010年
科学技術振興機構 さきがけ「生命現象と計測分析」領域研究者(兼任)
2011年-
早稲田大学 理工学術院(先進理工学部、先進理工学研究科) 教授

学歴ー

1988年
京都大学 理学部生物物理学科卒
1993年
京都大学 大学院 理学研究科 博士課程修了 博士(理学)