concept

量子力学に立脚した
計算物質探索

量子材料学研究室武田 京三郎 教授

担当科目:物質の量子論(二年生秋学期)、
物質の電子論(三年生春学期)、
量子材料学特論(大学院生)

  • 研究紹介research

    当研究室では物理・化学・生物の境界領域に属する新物質群に着目し、そのような物質で電子がどのように振る舞うかを実験に先駆けて理論予測しています。さらに発現可能な量子物性の基礎研究を行い、新しい量子材料の計算物質設計を目指しています。
    研究対象を結晶や高分子に焦点を当てた「量子材料学」、
    生体機能を電子の振る舞いから探る「量子生物学」、
    計算機を用いて電子に対する量子論を検討する「量子理論」
    の3つに大別し、研究を進めています。

  • メッセージmessage

    理工系の醍醐味は研究室にあると言っても過言ではありません。専門の研究遂行は勿論ですが、毎日教員・先輩・後輩に囲まれながら研究成果以上の何年経ってもその人の支柱となる『大切な心』を学ぶ事が大切です。

研究説明research activities

これまでの研究内容を上記三分野毎に概略します。
【量子材料分野】
IV族骨格高分子類の電子論に立脚した計算物質探索を行っている。これまでポリシランにおけるSi元素の光活性化の理論予測とσ電子非局在性の提唱、さらにシリセン・ゲルマネンの存在をグラフェンに先駆け予測し、IV族骨格ナノリボン・ナノリング・ナノチューブのスピン多重度まで含めた包括的電子論を構築した。近年は研究対象を準結晶クラスタ類に拡張し、クラスタ周辺構造修飾に起因する中心局在相を見出している。

【量子生物分野】
たんぱく質ナノリング(PNR)が水素結合を介して積層するナノチューブ(PNT)に着目し、そのカチオン輸送能及びアニオンによる崩壊能を見出した。加えてPNR自身が正負両イオン捕捉能を有する新奇物質群であることを理論予測した。

【量子理論分野】
半導体中正孔に焦点を当て、スピン軌道相互作用(SOI)がサブバンド間相互作用を介してスピンテクスチャに及ぼす影響を検討している。特にΓ点以外に存在する縮退点がワイル的電子構造を有するため、位相幾何の観点から研究を進めている。現在SOIにより波動関数の時間発展現象を量子ゲートによる等価回路に還元する新たな方法を提案し、スピン動力学の物理現象解明の新たな展開を行っている。

  • 未知物質に内在する物性解明に対する実験的アプローチと計算科学的アプローチ:その通底を為す学問域と理解への哲学

    未知物質に内在する物性解明に対する実験的アプローチと計算科学的アプローチ:
    その通底を為す学問域と理解への哲学

  • 図1:側鎖をフェニル基で置換されたポリシラン(量子材料分野)

    図1:
    側鎖をフェニル基で置換されたポリシラン(量子材料分野)

  • 図2:タンパク質ナノリングとナノチューブ(量子生物分野)

    図2:
    タンパク質ナノ
    リングとナノ
    チューブ
    (量子生物分野)

  • 図3:重い正孔のサイクロトロン運動に伴うスピン混成(量子論分野)

    図3:
    重い正孔のサイクロ
    トロン運動に伴う
    スピン混成
    (量子論分野)

profile

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略歴ー

1983年
日本電信電話公社入社 武蔵野電気通信研究所配属
NTT基礎研究所主任研究員を経て
1995年
早稲田大学 理工学部 助教授
1997年
同 教授(現在に至る)

学歴ー

1978年
慶應義塾大学 工学部計測工学科卒
1983年
慶應義塾大学 大学院 工学研究科計測工学専攻修了(工学博士)