concept
実システムを
モデルベースで
自在に動かす
アドバンス制御研究室渡邊 亮 教授
担当科目:回路理論B、制御工学、
モデリングと制御
concept
実システムを
モデルベースで
自在に動かす
アドバンス制御研究室渡邊 亮 教授
担当科目:回路理論B、制御工学、
モデリングと制御
航空機、自動車、船舶、製造設備などの実システムを、コンピュータと電子機器を使って思い通りに動かすことを「制御」といいます。制御は現代の社会や生活を支える基盤技術の一つであり、その汎用性の高さから適用分野は多岐にわたっています。本研究室は、「良い制御」を実現する数理的なモデリングとモデルに基づいた制御手法の開発、およびこれらの実システムへの適用に取り組んでいます。
制御工学は、数理的なモデリングと制御理論という道具を用いて実システムという現実に能動的に働きかけることを目的とする学問分野です。制御工学は数学的で機械/電気システムだけを対象とする学問分野であるという印象を持っている皆さんも多いと思いますが、それが制御工学の全てではありません。制御工学が扱う多様で豊かな世界を学びたい皆さんを待っています。
本研究室では、「良い制御」を実現するために必要な制御対象のモデリング、モデルに基づいた制御手法の開発、そしてこれらの実システムへの適用に取り組んでいます。制御工学が高い汎用性を持つことから、これまでに扱ってきた制御問題は多岐にわたります。その一部を以下に紹介します。
【1】省エネルギーと快適性を両立する電気自動車の空調制御:電気自動車の空調は、車載のバッテリーをエネルギー源と使用するため、夏と冬にはバッテリー容量の約40%が空調によって消費されます。空調が走行可能距離に直接影響するため、乗員の快適性を維持しつつ消費電力を抑制する空調制御が電気自動車の普及に向けての課題の一つとなっています。この課題を解決するために、車室内温度分布モデルと人体温度分布モデルを作成し、これらを組み合わせたモデルに基づいた快適かつ省エネルギーな空調を実現する制御手法の開発に取り組んでいます。
【2】製鉄における圧延と冷却プロセスのモデリングと制御:鋼板の連続圧延とそれに続く鋼板の冷却は、製品である鋼板の特性を決定する主要な生産プロセスです。鋼板の圧延と冷却について、その予測や評価に用いられている従来のモデルは実際の現象を高い精度で再現することに主眼が置かれており、圧延制御系や冷却制御系の設計と高い親和性を持つモデルであるとは言えません。この問題に対し、鋼板の厚さや温度の時間変化を表すモデルを制御系設計と親和性の高いコンパートメントモデルとしてモデリングするというアプローチを用いて、高品質な鋼板の効率的な生産を実現するモデルベース制御手法の開発に取り組んでいます。
【3】ジェットエンジンの推力制御:航空機の推力発生装置として広く使われているジェットエンジンを安定に動作させるためには、温度や圧力などの内部状態に関する数多くの制約条件を満たしながら燃料流量や排気ノズル面積を操作することが求められます。従来提案されている広い範囲で動作するジェットエンジンのシミュレーションモデルは非常に複雑であることから、これを直接用いてジェットエンジンの推力制御系を設計することは困難です。そこで、推力制御系の設計と親和性の高いジェットエンジンのモデリングと、このモデルに基づく高性能な推力制御系の設計に取り組んでいます。
【4】バッテリーモデルを用いた電気自動車の経済性の評価:二酸化炭素の排出量を減らす目的で導入が進められている電気自動車ですが、従来のガソリン車と比べて車体価額が高いことやバッテリーの劣化に伴うバッテリー交換が必要となるなど、ガソリン車と比べた場合の経済的な優位性が明確に示されているとは言えません。この研究では、劣化を再現するバッテリーモデルを用いた長期間のシミュレーションを実施することによって、電気自動車の経済性を客観的に評価することを試みています。