concept
予防医学に向けた
超音波医工学センサの
新展開
分子センサデバイス研究室柳谷 隆彦 教授
担当科目:電磁気学要論、電磁気学B
プラズマエレクトロニクス、
超音波デバイス
concept
予防医学に向けた
超音波医工学センサの
新展開
分子センサデバイス研究室柳谷 隆彦 教授
担当科目:電磁気学要論、電磁気学B
プラズマエレクトロニクス、
超音波デバイス
現在、高齢化に伴う医療介護費の増大が社会問題となっています。その軽減には病気を早期発見して治す予防医学の進展が重要です。柳谷研では、超音波を用いた医工学融合デバイスを開発しています。例えば、微小な超音波振動変化から25メートルプールにスプーン一杯分の抗原高感度検出(世界最高水準)に成功しています。さらに超高周波音波を使って、ネクスト5Gスマホ向けの無線部品も開発しています。研究室で発明した技術を特許化し、数多くの大手電気メーカと共に製品化を目指しています。
研究室の研究活動はこれまで学んできた理系人生の集大成です。「一流研究者を育てたい」という高い志を持って指導に当たります。ものづくりに立脚し、これからの日本を支える自立した研究者を育成します。柳谷研究室ではアイディア勝負で海外の有名研究所と競争しています。自分の発明が実用化する喜びを共に分かち合いましょう!
近年、先進国では医療介護費の増大が社会問題となっており、10年後には、現在の税収の2倍の100兆円にも達すると予想されています。軽減には予防医学の進展が重要です。ヘルスモニタリングや患者見守りシステムの構築には、医学的見地だけでなく工学の知見も必要です。特に、在宅医療・訪問医療の重要性は、QOL(クオリティ・オブ・ライフ)の観点から、ますます高まっています。そこで、お医者さんが持ち運べる、超音波を使った小型な病変マーカ(がんマーカなど)センサを開発しています。
例えば、固有振動している橋げたに車が通ると、重さで固有振動数は変化します。同様に抗体が生えたナノサイズの橋げたに抗原が付着(抗原抗体反応)すると、固有振動数は変化し、その変化量から逆に抗原濃度を推定できます。
しかし実は、通常の薄膜は縦波で振動するため、バイオ用途には使えないという問題がありました。生体材料などの液体を薄膜に付着させると振動のエネルギーが液体に漏れていってしまい、振動できないのです。
当研究室では世界で初めて純横波を発生させる圧電薄膜を発見しました。これにより液中でも振動を持続できるようになりました。
図1:抗原付着による固有振動数の低下の様子
図2:環境電波発電デバイス
微小な超音波振動変化から25メートルプールにスプーン一杯分の抗原を高感度検出(世界最高水準)することに成功しています。図1には、抗原付着による固有振動数の低下の様子を示しています。医工学融合分野はエンジニアのこれからの新たな使命でもあり、またそれを担う人材育成が急がれています。
さらに上記のようなセンサ単体にのみならず、センサ全体に関する研究も行っています。近い未来には、1兆個の大量センサが至るところに設置され、情報を収集するセンサビックデータ社会が到来します。このような大量のセンサで、直面する社会問題:(①少子高齢化、医療費増大、②インフラ老朽化、③エネルギー問題、④交通事故)を解決することが期待されています。具体的には下記のようなセンサが必要です。
①介護見守りセンサ、ウエアブル健康管理センサ
②インフラ監視センサ
③消費エネルギー監視センサ
④自動運転センサ、交通センサ
しかし現在は、センサを駆動する配線が不可欠であり、大量センサ普及の妨げになっています。そこで、独自の世界一の圧電効率を持つ薄膜を用いて、環境に飛んでいるスマートフォンやWi-Fiなどの電波を集めて充電する環境発電デバイス(エネルギーハーベスタ:図2)に関する国プロジェクトを推進しています。
現在は微弱で充電に不十分な環境電波も、数十年後には、無線通信の発展により電波密度は数倍以上にもなることが予測されます。柳谷研では、このよう先回りして、未来に花咲く技術を開拓することを目標にしています。